ムスクとは、清潔感とほのかな色気をあわせもつ、独特の甘い香りが人気の香料です。香水を始め、石鹸、柔軟剤、ディフューザー、化粧品、ハンドクリームなど、身の回りの多くの製品に用いられています。
現在流通しているムスクのほとんどが合成香料ですが、元はジャコウジカ(麝香鹿)から採れる天然の香料でした。ムスクは、古くから媚薬効果やリラックス効果など、さまざまな効能がある貴重な香料として扱われてきました。この記事では、そんな魅力たっぷりのムスクの特徴、効果、種類、正しい付け方など、ムスクにまつわる基本知識をご紹介していきます。
ムスクとはどんな香り?
ムスクは、深みのある独特の甘い香りが特徴です。「温かみのある香り」「色気のある香り」「動物的な香り」「ベビーパウダーの香り」などと表現されることもあります。ムスクの強みは、この特有の甘みと「香りの持続性の高さ」にあり、ラストノート(香水の最終段階で香る香り)に多く使われています。現在流通している香水の香調を見てみると、ラストのほとんどにムスクが入っていることに気づくかと思います。ムスクは、今や香水を作るのに欠かせない成分のひとつと言えます。
ムスクの原料・歴史について
現在、流通しているムスクのほとんどが人工的に生成される合成香料ですが、元はヒマラヤなどに生息するジャコウジカ(麝香鹿)という動物から採れる天然の香料でした。オスのジャコウジカは、生殖器とおへその間にジャコウセン(麝香腺)と呼ばれる器官を持っています。そこから分泌される、わずかなゼリー状の半液体であるジャコウ(麝香)が、本来のムスクです。一頭の鹿からわずか30gほどしか取れない貴重なもので、高級品として取引されていた歴史を持ちます。
人を引きつける魅力的な香り、拡散性、持続性をあわせもつムスクは、古くから香水の原料として使用されてきました。しかし、ムスク製造のためにジャコウジカが乱獲されたことから、その後ジャコウジカは絶滅の危機に瀕してしまいます。そのような歴史から、現在では天然の動物性ムスクはワシントン条約により取引が禁止されているため、ほとんど手に入らなくなっています。
この天然の動物性ムスクの代わりに登場したのが、人工的に生成される合成ムスクです。精油、エタノール、精製水などが主な原料となります。また、合成ムスクの構造は大きく分けて、大環状ムスク、多環状ムスク、ニトロムスク、脂環状ムスクの、4種類に分類されます。どのムスクを配合するかは、製造会社によっても異なります。
ムスクの香りの効能について
古くから、ムスクは気持ちをポジティブにしたりリラックスさせるための療法に使用されていたと言われています。天然の動物性ムスクには「強心作用」や「興奮作用」などの効果があり、薬としても使用されてきました。その他、病気の予防や精神衰弱、ぜんそくなどに効果があるとされ、一部の国では、現在でも漢方薬として用いられています。もともと、ムスクはジャコウジカのオスが、メスを惹きつけるためのフェロモンの香りです。
前述の通り、現在流通しているムスクのほとんどが合成ムスクであり、この合成ムスクには、天然ムスクと同等の効能はありません。しかし合成ムスクであっても、その独特の甘い香りは「官能的」または「異性を惹きつける香り」と評されることが多くあります。
ムスクの主な種類について
ムスクと呼ばれる香りは1種類ですが、合成ムスクは成分の配合方法や配合比率によってさまざまな香りを表現することができます。以下では、合成ムスクの代表的な8つの種類をご紹介していきます。
合成ムスクの代表的存在「ホワイトムスク」
合成ムスクの中でも、最もよく知られているのがホワイトムスクです。動物性の天然ムスクを模した、甘く深みのある高貴な香りが特徴です。濃厚な天然ムスクに比べると、くせのない爽やかな香りと言えます。石鹸のような香りであることから、ホワイトムスクと呼ばれています。ホワイトムスクは。香料の正式な成分名としてではなく、天然ムスクの代わりに使われる「一般的な合成ムスクの通称」として用いられることも多くあります。
官能的に香る「レッドムスク」
甘い香りの中に、ピリリとした刺激的な香りが効いているのが「レッドムスク」です。ムスクの中でも、個性が強くより官能的な香りとも言われています。香水を使い慣れた方や、男性にも人気の香りです。暖かみのある香りに包まれて眠りたい時の「寝香水」としての使用や、デートの際にもおすすめです。
森のように爽やかで深い「ウッディムスク」
「ウッディムスク」はその名前の通り、森のように爽やかで、落ち着いた深い香りが特徴です。ホワイトムスクに比べてクセがなく、優しく香るので、男性用の香水にも多く用いられています。
優しく香る「カシミアムスク」
「カシミアムスク」は、保湿・保温効果が高い、高級素材のカシミアをイメージして作られた香りです。ふんわりと優しく包み込むように広がる香りが特徴で、控えめにムスクを楽しみたい方や、香水初心者さんにもおすすめです。
さりげなく広がる「クリスタルムスク」
香水を付けてから30分くらいまでに広がる香りを「トップノート」と呼びますが、クリスタルムスクはこのトップノートが控えめで、さりげなく広がる香りが特徴です。また、控えめながらも甘く持続性があることから、多くのムスク系香水に用いられています。
高級感漂う「パウダリームスク」
「パウダリームスク」は、高級感漂う大人な雰囲気の甘く優しい香りが特徴です。香水を始め、フレグランスシートにも多く使用されています。パウダリームスクを用いたフレグランスシートを、玄関やシューズクローク、クローゼット内に忍ばせることで、手軽にワンランク上の空間を演出することができます。
甘酸っぱく可憐な「ブラックベリームスク」
ムスク特有の甘さの中に、ベリー系の甘酸っぱい香りを加えたのが「ブラックベリームスク」です。少女のような可憐さが魅力の香りです。ムスクの魅力を活かしつつ、少し個性を出したい方におすすめです。
柑橘系の香りが特徴「マンダリンムスク」
「マンダリンムスク」は、柑橘系の爽やかな香りが特徴です。一般的なムスクの甘い香りを求める方には不向きですが、ムスクの中にも爽やかさや新しさを求める方にはぴったりです。普通のムスクとは一味違った香りをお探しの方は、一度試してみてはいかがでしょうか。
ムスクの香水をつける際のポイント
ここまでご紹介してきた通り、さまざまな魅力を秘めているムスクですが、一方でムスク特有の深く甘い香りは、人によっては好き嫌いが別れることもあります。ここでは、ムスクの香水をつける際のコツや、気をつけたいポイントをご紹介していきます。
(1)香水をつける際は、身体から20~30センチ離して1プッシュ
いくら素敵な香りでも、過度な香りは周囲の迷惑となります。特にムスク特有の甘い香りは、人によっては強く感じられることもあるため注意が必要です。
香水をつける際は、身体から20~30センチ離して1プッシュ程度が適量です」。少し物足りないかな?と感じるくらいの量を意識しましょう。よりさりげなく香らせたい時は、空中に一拭きさせてその中に身体をくぐらせると良いでしょう。
また、香水を付けるのは外出する30分前くらいがおすすめです。香りが肌に程よく馴染み、最もバランスの良いミドルノートが香り始めるタイミングとなります。
(2)食事やビジネスシーンは要注意
甘く魅力的なムスクの香りですが、不向きなシーンもあります。中でも最も気をつけたいのが食事の場面です。強いムスクの香りが、料理の邪魔をしてしまう危険性があるため、食事の予定がある場合は控えた方が無難です。
また、ビジネスシーンやフォーマルシーンにおいても、あまりに強い香りはマナー違反ととらえられてしまう可能性があります。どうしても香水を付けたいという場合は、石鹸やシトラス系などの爽やかな香りを、ごく控えめにつけることをおすすめします。
(3)季節によって付け方や量を調節する
日本では、四季の移り変わりと同時に気候やファッションも変化します。香水の香り方も季節によって異なるため、それぞれの季節に適した量や付け方を工夫するとより香りを引き立てることができます。
例えば、暖かくなり空気が乾燥し始める春は、香水の成分が飛びやすくなり香りの持続性も弱まります。そのため、春は普段より少し多めに、こまめに付け直すと良いでしょう。また、体温が上がりやすい夏は、少なめの量でも強く香ります。特にムスクなどの甘い香りは広がりやすいので、ごく控えめな量をつけるように意識しましょう。また、香水は汗のにおいなど他のにおいと混ざると変質してしまうので、手首など「汗をかきにくい場所」に付けると良いでしょう。
秋、冬と、肌寒い季節はムスクの濃厚な香りと相性が良い季節と言えます。また、寒くなると体温が低くなり、さらに厚着になることで香りが広がりにくくなるので、しっかりと香らせたいシーンでは普段より少し多めの量を意識すると良いでしょう。
香水は、体温が高くなる場所に付けるほど香りが広がりやすいと言われています。香水を付ける場所は「どのように香らせたいか」を考えて選ぶと良いでしょう。香りは下から上へと上昇する性質があるので、しっかり香らせたい場合は首筋などの上半身、優しく香らせたい場合は膝の裏などの下半身に付けるのもおすすめです。
【まとめ】
この記事では、ムスクの特徴や魅力についてご紹介してきました。気持ちを高めたりリラックスさせたりと、香りの効果は多岐に渡ります。ムスクを始めとするさまざまな香りを、生活の中に上手に取り入れてみてくださいね♪
この記事はMELLフレングランス編集部が監修しました。小分け香水に関して、今後もお役に立つ情報を提供してまいります。