香水を「重ね付け」するというテクニックをご存知でしょうか。複数の香水を重ね付けすることを「レイヤリング」又は「レイヤー使い」と呼びます。お気に入りの香水を1種類で使ってももちろん素敵ですが、2〜3種類の香水を重ね付けすることで、香りに奥行きを出したり、自分だけの香りを楽しむことができます。手持ちの香りに変化を付けたい場合にもおすすめです。
とは言え、数多くある香水の中で「どの香りをどのように組み合わせたら良いのかわからない」と迷われる方も多いかと思います。この記事では、香水の重ね付けについて、香りの選び方から正しい付け方まで詳しくご紹介していきます。
香水の重ね付け(レイヤリング)とは?
香水の「重ね付け」とは、2〜3種類の複数の香水をまとって香りの調和や変化を楽しむことを指します。「レイヤリング」又は「レイヤー使い」と呼ばれることもあります。
香水の重ねづけを推奨しているブランドもあり「カクテル」や「ミソコロジー」と呼ばれたり、各ブランドによってその名称もさまざまです。
香水の重ね付けのメリットについて
香水を重ね付けする際は、下半身と上半身、体の前と後、というようにそれぞれの身体の部位に違った香りを付けるのが基本です。そうすることで空気中に香りの層が生まれ、香りを立体的に楽しむことができます。複数の香りを組み合わせることで、手軽に自分だけの香りを纏うことができ、自己表現の幅もぐっと広がります。
また香水の重ね付けは、「手持ちの香水に飽きてしまった」という方や「その日の気分や予定によって違う香りを楽しみたい」という方にもぴったりです。香水の適切な使用期限はパッケージ開封済みのもので約1年、未開封のものでも約3年と意外と短いもの。1度に使う量も少なく、開封しても使い切るまでに時間がかかるので、使い切れずに余らせてしまっているケースも多いのではないでしょうか。他の香水との重ね付けなどで気分を変えつつ、香りや成分が劣化する前に使い切ってしまうことをおすすめします。
香水を重ね付けする際の注意点
香水を重ね付けする際は、2種類にこだわらず、3種類以上の香りを使っても問題ありません。自分が心地良いと感じる香りを自由に組み合わせて楽しみましょう。とは言え、香水によってはあまり重ね付けに適さないものもあります。例えば、調香師によって香りのバランスが緻密に計算された高価なブランド香水などです。
一般的に、香水の香りは付けてから時間が経つにつれて3段階に変化します。それぞれトップノート、ミドルノート、ラストノートと呼ばれていますが、この香りの変化やバランスが1本で綺麗にまとまるように計算されて作られた複雑な構成の香りの場合、重ね付けすることによって、調香のバランスを崩してしまうことがあります。
それほど神経質になる必要はありませんが、重ね付けをする香水選びに迷った際は、単体の香りで構成されたシンプルな「シングルノート」の香水を組み合わせるのが無難です。
香水を重ね付けする際の香り選びのポイント
ここでは、異なる2つ以上の香りを組み合わせる際の、香り選びのポイントについてご紹介していきます。
(1) 同じ香料を使った香水を組み合わせる
初心者さんでも失敗しにくい組み合わせは「同じ香料」を使用した香水や「香りのイメージが近い」ものを選ぶという方法です。
例えば、ロマンチックなフローラル系同士、爽やかな柑橘系同士、というように同系統のものであれば、他ブランドの香水や複数の香りであってもお互いにケンカせずにバランスよくまとまります。
男女問わず好感度の高い香りでまとめたい時は、オレンジやベルガモットなどのシトラス系をベースにするのがおすすめです。その他、清潔感のある石鹸の香りや水をイメージしたアクア系もクセがなく、普段使いしやすい香りです。
(2) 正反対の香り組み合わせてコントラストを楽しむ
上級者さんの場合、シトラス系×ウッディ系、フローラル系 × スパイシー系というように、あえて正反対の香りを組み合わせて、コントラストを楽しむという方法もあります。その他、フルーティ系やフローラル系などの、ふんわりとしたイメージの香りに、スパイシー系の香りを少し加えることで、アクセントが効いたおしゃれな印象の香りに仕上がります。
全く異なる種類の香りを組み合わせることで一方の香りをより引き立てたり、個性的な香りを発見できることがあります。重ね付けに慣れてきたら、色々な組み合わせに挑戦してみてはいかがでしょうか。
(3)シングルノート同士の香水を組み合わせる
【香水を重ね付けする際の注意点】の項目でご紹介したように、重ね付けをする香水選びに迷った際は、単体の香りで構成されたシンプルな「シングルノート」の香水を組み合わせると良いでしょう。
一般的に、香水は時間の経過と共に香りが変化していきます。付け始め〜30分くらいの香りをトップノート、トップノートのあとに1〜2時間続く香りをミドルノート、香水を付けてから2〜3時間後に現れる香りをラストノートと呼びます。
一方で、1種類の香料のみを使用して作られた「シングルノート」と呼ばれる香水もあります。シングルノートは、トップノート、ミドルノート、ラストノートと呼ばれるような複雑な香りの変化がなく、重ね付けする際もお互いに香りのバランスを保ちやすいと言えます。また、付けた時の香りがそのまま継続するため、相性の良い香りが比較的見つけやすいというのもメリットです。
香水を重ね付けする際の正しい方法について
立体的に香りを楽しんだり、付ける人の魅力をより際立てたりと、香水の重ね付けにはさまざまな効果が期待できます。ただし香水の量や使い方を一歩間違えると、周囲に迷惑をかけてしまう可能性も。香水を楽しむ際は、周囲への配慮も大切です。ここでは、複数の香水を使用する際の「適量」や「身体のどこに付けると良いのか」など、正しく「香水の重ね付け」を楽しむための方法についてご紹介していきます。
(1)一箇所に一種類の香りをまとう
複数の香水を使用する際は、複数の香りを一箇所にまとめて付けるのではなく「下半身と上半身」「体の前と後」というように分け、それぞれの身体の部位に違った香りを付けるようにしましょう。一箇所に一種類の香りを付けることで、それぞれの香りを打ち消すことなく、引き立てることができます。
また香水を付ける際は、身体から20~30センチ離して、一箇所につき1プッシュが基本です。香りの控えめなオーデコロンの場合は、様子をみながら2〜3プッシュしても良いでしょう。
香水の香りは、自分にとっては心地良くても、周囲の人にとっては予想以上に強く感じられることがあります。特に重ね付けをする際は、付ける香水の量も増えるので、少し「物足りない」と感じるくらいの量を意識しましょう。よりさりげなく香らせたい場合は、空中に香水を一拭きさせて、その中に身体をくぐらせても良いでしょう。香水を付けるタイミングは出かける30分前くらいがベストです。付け始めの強い香りが程よく馴染み、バランスの良い香りが楽しめます。
(2)ライトな香りは上半身に、重厚感のある香りは下半身に
香水を付ける場所は、どのように香らせたいかによっても変わってきます。香水は、体温が高くなる場所に付けるほど「香りが広がりやすい」と言われています。複数の香水を使用する際は、軽めの香りは上半身に付けてしっかり香らせ、重厚感のある香りは下半身に付けてほんのり香らせるとバランス良く香りを楽しむことができます。また、すれ違いざまに香りの余韻を残したい時は、身体の前側(胸元など)にフルーティ系やシトラス系の爽やかな香り、身体の後ろ側(首筋、背中など)にはスパイシー系やウッディ系などの温かみのある香りをつけるという方法もあります。
上半身に香水を付ける場合は、首筋、手首、ひじの内側などがおすすめです。首筋に香水をふる際は、いったん手首などに吹き付けてから軽く叩くようにして馴染ませると良いでしょう。香水にはアルコールが含まれているため、目や唇などのデリケートな粘膜部分に付着しないように注意が必要です。また、手首に香水を付ける時は、どちらかの手首に少量ふりかけた後、もう一方の手首で軽く叩くようにして馴染ませます。この時、両手首を強く擦り合わせないように注意しましょう。摩擦熱によって、香りが変化してしまう可能性があります。
下半身に香水を付ける場合は、膝の裏や足首などがおすすめです。下から上に上がっていく香りの性質を活かして、ほのかな香りを楽しむことができます。膝の裏や足首では香り方が物足りないという場合は、腰回りに付けるのも良いでしょう。香水を試したい場合は、直接肌に付ける前に、コットンやティッシュに吹き付けて香りを確認してみましょう。
(3)香水は清潔な肌に使用する
重ね付けする時意外にも言えることですが、香水を制汗剤や消臭剤の目的で使うのはやめましょう。香水は清潔な肌に使用するために作られたものです。汗のにおいなど、不快なにおいを抑える効果はありません。香水が他のにおいと混ざることによって、より不快なにおいを発生させてしまう可能性があります。特に柑橘系の香りは、汗や皮脂と混ざると香りが変化しやすいので注意が必要です。特に暑い季節は、デコルテ、脇、足の裏など「汗のかきやすい場所」に香水を付けないようにしましょう。
【まとめ】
香りの組み合わせから香らせ方まで、奥の深い香水の世界。重ね付けをすることで、その楽しみ方はますます広がります。洋服と同様に、季節や気分、シーンに合わせたコーディネートを試してみてはいかがでしょうか♪
この記事はMELLフレングランス編集部が監修しました。小分け香水に関して、今後もお役に立つ情報を提供してまいります。